映画『一人息子』

予約していた、県文化センター主催の無料映画会に行ってきました。
小津安二郎監督の『一人息子』。

会場はコロナ対策のために座席がかなり制限されていて、一見するとガラガラなのだけれどそれが満席。
観客の平均年齢は70歳といったところでしょう。

古い映画なので、音声がかなり聞き取りにくく、字幕がほしいと思うほど。

信州の、貧しい女工が苦労して一人息子を東京の学校にやり、就職をさせ、
晴れがましい気持ちでその息子に会いに上京してみれば、
出世していると思っていた息子はしがない夜学の教師で、しかも知らぬ間に結婚して子どもまでつくっていたというのだから、
その母親でなくとも「なんですと~?」と言いたくなりますよ。

家も桑畑も売って、ひたすら息子のために働いてきたのに、その息子はその日の暮らしがやっとという生活。
「信州で暮らしていたほうが良かった」なんて言われた日には…。

小津安二郎らしい映画で、私は何度も涙しました。
日本がうんと貧しかった時代の話だけれど、それにしても親が子どもを思う気持ちって、いつの時代も変わらないのだろう。

怪我をした向かいの家の子どものために病院に付き添い、お嫁さんが着物を売って用立てたお金を使ってくれとお向かいさんに渡した息子に、
「今日一日、私は本当に鼻が高かった」「大臣になんてならなくて良かった」という母親。

私は何度も涙しました。
この映画は原作も小津安二郎らしい。本当に、小津さんらしい映画でした。