『ハンナのかばん』カレン・レビン(石岡史子訳)

読書感想文コンクールの課題図書だったことは知らなかった。

アウシュヴィッツガス室で、到着したその日に殺された13歳のハンナ。
ホロコーストを日本で紹介する石岡史子さんが、展示品として借り受けたのがハンナのかばん。ハンナがどんな女の子だったのか、鞄の持ち主の手がかりを探すために、文字通り奔走するのです。

アポなしでいきなりチェコに行ってしまうのにもびっくりだし、その資料館が休館日だったということにもいやはや…。
ネットで世界中と瞬時にアクセスできる現代と違って、海外とのやり取りも手紙だし…時代を感じる。

でも石岡さんの、絶対諦めない姿勢と行動力に敬服。そして、ハンナの実兄が生存していることを突き止めたときの驚きと喜びといったら!

お兄さんが保管していた、生前のハンナの写真を見ても、幸せな家族であったことがわかるし、裕福でもあったのだと思う。ハンナより若いうちの両親には、子ども時代の写真はほとんどないよ。

この本を読む前に、『アウシュヴィッツの歯科医』という本を読んでいて、そちらのほうが衝撃だったけど、涙したのはこっちです。

ただ、てっきり石岡さんの書いた本なのかと思ったら、彼女は訳者。ん?作者についてまったく紹介されてないのが不思議。

それからもうひとつ思うこと。
ナチスが600万人ものユダヤ人を虐殺したというそれはわかるし、許せないし、こんなことが現実にあり得たのかと、読者は(特にこれは子ども向けの本だから、読者は子どもが多いはず)思うでしょう。
けどその先は?
ホロコーストの悲劇を伝えることは大事だと思う。
二度とこんなことを起こしてはいけない思う。
だからこそ、なぜ起きたのかを考えたいと思うのです。
私が子どもの頃、やっぱりアンネの日記を読んで、どうしてアンネたちはこんな目に合わなければならなかったのかと思ったから。
ユダヤ人とは何かということを、ヨーロッパの人々にとってどんな存在なのかを、子どもにも学べる本が出るといい。

二度とハンナやアンネを生まないために。

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