『おもみいたします』あさのあつこ

江戸時代を舞台としている時代小説だけれど、ライトノベルのようにあっという間に読めます。

揉み師のお梅ちゃんと一緒にいるのが犬の十丸。まぁここまでは、盲導犬は現代でもいるしな~と思ったけれど、鼠先生が出てきたところで、ええ~っ?!と笑ってしまった。

犬(と、普通の人にはそう見える)の十丸とも、鼠(と、普通の人にはそう見える)先生とも話ができちゃうお梅ちゃん。

お梅ちゃんの周りには優しい人がたくさんいます。

人殺しの犯人さがしのお話だけれど(犯人はわりとあっさり予想がついちゃう)、お梅ちゃんがとても素敵な女性で、あったかい気持ちになれるお話でした。

続編も読みたいな。

奥田英朗『普天を我が手に』

第三部まで読み終えました。

おもしろかった~

特に第二部。ページをめくる手が止まらないという経験は久しぶりです。

第三部は第二部に比べるとトーンダウンした感じでしたが、それは仕方ない。でもラスト近く、総裁選の一騎打ちでの、竹田史郎と矢野四郎の演説は、読んでいて涙が出てきてしまった。

「わたしの原点は昭和二十年の夏にあります。あの夏以上のことはもう絶対にない。わたしたちの世代にとって、戦争はそれほど大きな出来事でした。その呪縛からは逃れられないし、逃げる気もない。わたしたちの責任は、二度と戦争を起こさないことです」

戦争を経験した者が政治家であった時代と、そうでなくなった時代とでは、その隔たりが大きすぎる。

私は戦争を知らないけれど、戦争のない世界が、決して当たり前ではないということを忘れないようにしようと思う。

『皇后は闘うことにした』林真理子

高校生と接する仕事をしている。今の高校生は(高校生だけではないかもしれないが)元号を使わない。そもそも元号を知らない。

生年月日を尋ねると西暦で答える。

令和の前が平成だということはわかるが、その前が昭和だということはなんとか…という程度で、大正や明治となるとかなり怪しい。

だからこういう皇室を舞台にした小説は、一定の年齢層以上でないと受け入れられないのでは…と心配になるけど、どうなのだろう。

林真理子さんの書く皇室ものは本当におもしろい。どのお話もひとりひとりが生き生きしていて、さすがと思う。

私は昭和天皇のこともしっかり覚えている世代だし(私の知る昭和天皇はもうおじいちゃんだったけれど)、皇后になるのがどれだけすごいことかとか、平民出の美智子さまがどれだけ苦労をされたろうかとか、そんなことを思いながら読むのも良かった。

林さんの皇室ものをもっと読みたい。

 

「第一部 普天を我が手に」奥田英朗

昭和元年からスタートする大河小説。

奥田英朗氏の作品に外れなし。おもしろい!!

どの人物も生き生きしていて、とにかく昭和史を勉強されたんだなぁと思う。みんな魅力的だけど、特に竹田耕三が好き。彼の力でなんとか日米開戦を止めてほしかった(いや、無理なんだけどね笑)

ヤノタツが死んじゃったのが悲しい。彼にはこの戦争が終わるまで生き抜いてほしかったよ。

とてもおもしろいけれど、この戦争の行く末を知っている立場としては、この先を読み進めるのがちょっと重い気分。

戦争って、こんなふうに始まってしまうのだ。

軍部の暴走が恐ろしい。国家の扇動が怖い。

みんな死なないでほしい。

 

 

角田光代「福袋」

角田光代さんは「1000本ノックをするように短編書く」らしい。林真理子さんがそう話していたのを聞いた。

これは角田光代さんの短編集で、どのお話も、とっても上手に文章を書く人だなぁと思いながら読んだ。なんとなく、読み終えてちょっともやもやが残るというか、さみしい感じのするお話ばかりだったような気がする。

突然店員に、すぐに戻るからと段ボール箱を預けていなくなっちゃう女性の話とか、トイレに行きたいからと、駅のホームで見ず知らずの女性に赤ん坊を預けてなかなか戻ってこない若いママとか、ありえないと思いながらも、出てくる人はみんなその辺にいそうな人ばかり。

私はその、赤ん坊を突然預けられちゃう「白っていうより銀」というお話がいちばん心に残った。

戸惑いながら赤ん坊をあやす女性は、実は離婚届けを出してきたばかり。妊娠できないことに夫婦して悩みながら、平気なふりをしてきた結果の離婚。離婚届けを出したばかりの元夫もやってきて、その赤ん坊のおむつを替えたりする。

読みながら、このまま母親が帰ってこなければいいのにって思ってしまった。

もちろんそんなことはなくて、見ず知らずの他人に赤ん坊を預けてしまう非常識な母親もちゃんと帰ってくるし、夫婦はやっぱり別の電車に乗っていくのだけれど。

どの短編も、続きが気になるところで終わるのでした。

「さよならドビュッシー」中山七里

このラストは想像してなかった。

でもこのラストにきて、なんかずっともやもやしてたことがスッキリした。

大火傷をおって死の淵をさまよったような状態で、顔だけはまったく元通りになるなんておかしいよね…って違和感あったから。

それでも2人が入れ替わっていることには気がつかなかったから、そういうことか〜!って気持ちと、それはずるいって気持ちと、両方。

これが「このミステリーがすごい」大賞をとった作品ということは読んですぐは納得したけど、時間が経ってくると、これが大賞っていうのはなぁ…って気持ちになってきた。どんでん返しというより、読者をだましてる感じでなんかすっきりしない。人がたくさん死ぬし、映画化までされた作品(観てないけど)というのがちょっと信じがたかったです。

『終わらざる夏』浅田次郎

読み始めは、これは一気に読んじゃうな〜と思ったのだけれど、なんのなかなか進まなかった。上下巻読み終わるのに一夏かかった感じ。

いろんな人物が登場します。みんなそれぞれにいろんな人生を生きている。

それぞれに感情移入してしまって、みんな生き残ってほしい!と願いながら読んだけれど、ほぼほぼ死んでしまう。死ななくていい人がたくさん死んでしまうのです。

ポツダム宣言受諾後に攻撃してくるソ連は憎いけれど、ソ連兵にも同情するように書いてくるのが浅田次郎。どっちも辛いんじゃん!

ここに登場した人たちすべてに生き残ってほしいと思ったけれど、彼らだけでなく、戦争で亡くなったすべての人がそれぞれの人生を生きていて、それぞれが理不尽に死んでいったのだろう。

シベリアに抑留された人たちなんて、理不尽以外の何ものでもない。戦争に負けるってそういうことなんだと思いつつ、どうかせめて菊池医師が、生きて日本に帰ってくれるようにと、泣きながら願いました。