『小説8050』林真理子

まさしく一気読み。本当に一気に読んでしまいました。
おもしろい。
さすがの林真理子さん。
私立中学をやめて7年間引きこもりの青年。歯科医の父親。専業主婦の母親も、早稲田を出た姉も、その一家の描写が巧みで、引き込まれます。

そんなにうまくいくわけないよと思うところももちろんあるけれど、主人公の翔太をいじめていたかつてのクラスメートたちとの法廷の場面は涙が出る思いでした。
7年も引きこもっていた青年が、こんなに論理的で力強い発言ができるのは、それはやっぱり小説だから?でもその息子の言葉に涙を拭う父親の姿に、私も涙してしまったよ。

弁護士の高井さんや、翔太の側に立って証言をしてくれた田村梨里花や、証拠となる日記を提供してくれた用務員の増田さんや、いろんな人の力があったのはもちろんだけど、バカではダメだと思ったことです。
翔太はバカではなかった。賢い青年だからこの結末を得たのだと思う。

いじめにあって引きこもってしまうような子どもがいる世界。そんな世界は嫌です。

今村翔吾「塞王の楯」

近くの城址公園に立派な石垣があります。
城というと天守閣というイメージだったけれど、この本を読んで石垣を見る目が変わりました。

読み始めるまでは本の分厚さにひるんだけれど、とても読みやすくてとてもおもしろかった。

京極高次がいい。
実際の彼がどんな人物だったのかは知らないけれど、彼に死んでほしくないと思ったし、だから匡介を応援しました。匡介にとっても、仕事であれば請け負うのは当然とはいえ、高次の側についての仕事は特別だったと思う。

匡介と玲次の関係も良かったし、嫌な人が誰もいない。
とても後味のいい小説でした。

『一橋桐子(76)の犯罪日記』原田ひ香

いや~ 思いがけなくおもしろかったです。
もっと暗くて深刻な話を想像していたのに、なんて楽しいこと!
ちょっとできすぎだなぁとは思いますが、桐子さんがとてもいい人なので、周りにもいい人が集まってくるのだなぁと納得できます。

桐子さんはハッピーエンドだったけれど、そうでない人も登場しました。
日本は介護保険制度もあるし、生活保護もあるし、医療も充実してるし、いい国のはずなのに、
桐子さんのように老後が不安な人、いっぱいいるはず(私も…)。

だから、うまくいきすぎ!というお話でも、うまくいってくれてよかったなぁと思えるのでした。
桐子さん、刑務所に入らなくて良かったね。

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『 また、桜の国で』須賀しのぶ

今年読んだ本の中で、いちばん胸にずしんときました。
後半はずっと泣いてました。
第二次世界大戦期のポーランドが舞台です。主人公は、日本人外務書記生の棚倉慎(たなくらまこと)。

ポーランド孤児の話が出てきます。孤児の話は、以前敦賀に行って知っていました。
ワルシャワ蜂起のことは名前だけしか知りませんでした。
ドイツ軍がものすごい悪役として登場しますが、ポーランド側から見ればその通りなのでしょう。
実在の人物もたくさん登場するので、慎も実在していたのではないかと錯覚してしまいます。
あくまで小説の中の人物だけれど、それでも彼には生きていてほしかったです。

この本は、高校生直木賞の受賞作なんだそうです。その賞の存在を初めて知りましたが、直木賞受賞作よりこの小説のほうが上なんじゃないかと思ってしまいます。
そしてこれを選んだ高校生をすごいなぁと思いました。私が高校生のときは、この本を読む力はなかったです。

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玉音放送(現代語訳⇒英訳)

続きまして。

玉音放送の現代語訳をつくりました。

公開されている原文を読んでみると、ほんとうに難しくて、日本人生徒であってもとても理解できないと思われたので。

(私も難しかった)

 

こうしました

 私は世界と日本の現状についてよく考え、今日本が直面している危機的な状況を収めようと思い、ここに誠実で善良なあなたたち国民に申し伝える。

 私は政府に、アメリカ、イギリス、中国、ソ連の4カ国の共同宣言(ポツダム宣言)を受けいれると返答するよう、命令した。

 そもそも、国民がおだやかに生活し、世界の国々と共に栄えるようにしていくことは、代々天皇家が残してきた手本であり、私もそのように願ってきた。最初にアメリカとイギリスの2カ国に宣戦布告したのも、日本の自立とアジアの安定を願う気持ちからであり、ほかの国の主権を侵したり、その領土を侵したりすることは、決して私のめざすところではない。
 しかし、戦いが始まってすでに4年が経った。陸海の軍人は勇ましく戦い、役人たちもよく働き、国民もみな努力して、それぞれ最善を尽くしたにもかかわらず、戦局は良くならず、世界の情勢もまた私たちに不利である。
 そればかりか、敵は新たに残虐な爆弾を投下して、罪のない人々を殺傷し、その悲惨な被害は計り知れない。これ以上、戦いを続ければ、ついにはわが民族は滅亡し、さらには人類の文明をも破滅させることになってしまう。
 そのようなことになれば、私はわが子とも言える国民を守ることができず、歴代天皇の霊に顔向けできない。これが、私が政府に共同宣言に応じるようにさせた理由である。
 ポツダム宣言の受諾にあたり、私は、アジアの解放のためにともに力を尽くしてきた友好国に対して、申し訳ない気持ちでいっぱいである。国民においては、戦地で命を失った者、 職場で命を落とし、悲惨な最期を遂げた者、そしてその遺族のことを考えると、 心も体も引き裂かれる思いがする。

 これから日本が受ける苦難は尋常なものではないであろう。国民の悔しい思いも、私はよくよく分かっている。けれども私は、耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、これからもずっと続いていく未来のために、平和への扉を開きたい。
 私はこうやって日本の国の形を守り、忠誠心が厚く善良な国民の真心を信頼し、常にあなたがた国民とともにある。
 もし、感情的に争いごとを繰り返したり、仲間をだましたりして世の中を混乱させ、そのために世界の信頼を失うようなことは、絶対にいけない。

 どうか、国民みながひとつになり、子孫ともども、わが国の不滅を固く信じてほしい。国家の再生と繁栄への責務は重く、そこに至る道は遠いと心に刻み、持てる力を日本の将来の建設に注いでほしい。道義心をあつくし、志を固くして、日本の栄光を再び輝かせるために、世界の動きに遅れないよう努力してほしい。

 あなた方国民には、以上の私の思いをよく理解し、実現してくれるよう願う。

 

どうでしょう・・・?

だいぶわかりやすくしたつもりですが、昭和天皇の言葉は日本語なわけだし、あんまり変えるのも・・・と思いつつ、つくってみました。

そしてその現代語訳を英訳してみたのがこれです。

 I ponder deeply about the current situation of the world and Japan, and I decided to effect a settlement of the present situation Japan facing today, and now, I would like to tell it to my sincere and good people of nation .

I have ordered the Government to communicate to  the United States, Great Britain, China and the Soviet Union that Japan accepts the provisions of their Joint Declaration.

In the first place, making the people live calmly and prosper together with the countries of the world is a model that the Emperor has done for generations, and I have hoped to continue that.
The reason for declaring war  on the United States and Britain first is because of the desire for Japan's self-reliance and the stability of Asia, and it was not my purpose to violate the sovereignty of other countries or their territory. 
However, four years have already passed since the battle began. Despite the brave fights of the soldiers on the land land and soldiers on the sea, the hard work of the officials, and the efforts of all the people to do their best, the tide of war has not improved and the world situation is also at a disadvantage to us.
Not only that, the enemy dropped new brutal bombs, killing innocent people, and the devastating damage was immeasurable. If we continue to fight any longer, Japanese people will eventually be destroyed, and even human civilization will be destroyed.
If that happens, I will not be able to protect my people , and I will not be able to show my face to the spirits of successive emperors. This is why I made the government accept the joint declaration.
In accepting the Potsdam Declaration, I am deeply sorry for the friendly countries that have cooperated with Japan for  liberation Asia. You, my people,  when I think of those who lost their lives on the battlefield, those who lost their lives in the workplace and had a miserable end, and their bereaved families, I feel my body and mind are torn apart.

The hardships that Japan will suffer from now on will be extraordinary. I understand the frustrating thoughts  of my people.  However,  I endure the intolerable  and I want to open the door to peace for a future that will continue forever .
Having been able to protect and maintain the structure of Japan,  I trust in the sincerity of my good and loyal people, and I am always  with my people.
You must not quarrel emotionally or betray your peers.  Disrupting the society, making mistakes and losing the trust of the world is what I want to stop most.

 Please, I would like my people to unite as one and to firmly believe in the immortality of our country with our descendants.   Please,  keep in your mind that the responsibility for the revitalization and prosperity of the country is heavy, and there is a long way to go, and I would like you to focus on the construction of Japan in the future. Please, I would like you to keep up with the movements of the world in order to cultivate your morality, solidify your ambitions, and shine the glory of Japan again.

I hope that my people will understand  my thoughts and come true.

 

昭和天皇のお気持ちは、とても再現できていないと思いますが、がんばりました。

Google先生、ALTの先生、ありがとうございます。

 

ポツダム宣言(簡訳版⇒英訳)

ポツダム宣言。この英文全文はネットにあります。

でもこのままだと難しいので、これを簡単な英文に直してみることにしました。

その前に、そもそも簡単な日本語訳をつくってみます。

これ

1 アメリカ大統領、中華民国主席、イギリス首相が国民を代表して話し合った結果、この戦争を終わらせるチャンスを日本に与えることにした。

2 アメリカ・イギリス・中国の軍隊は巨大で、日本に最後の一撃を加える準備ができている。

3 日本に向けようとしている力は、ナチスドイツを崩壊させた力よりはるかに大きい。われわれの力をすべて投入すれば、日本軍は壊滅し、日本の国土はすべて焼き尽くされるだろう。

4 日本が決断するときは来ている。身勝手な軍国主義者にコントロールされたまま滅びるのか、それとも理性の道を選ぶのか。

5 われわれの条件は以下の通りである。この条件から外れることは一切認めない。代替条件はない。返答の遅れも一切認めない。

6 日本の人々をだまし、間違った道へ導き、世界征服を企てた権力は取り除かれなければならない。無責任な軍国主義がなくならなければ、平和、安全、正義の新秩序は実現不可能だ。

7 そのような新秩序が確立されるまで、また日本に戦争をする力が完全になくなったとはっきり証明されるまで、日本の領土内の指定地域は、われわれ連合軍が占領する。

8 カイロ宣言の条項は守られなければならない。日本の主権は、本州、北海道、九州、四国と、われわれが決定する周辺の島に限定する。

9 日本の軍隊は、完全に武装解除してから帰還する。そして平和で生産的な生活を営む機会を与えられる。

10 われわれは、日本人を差別したり、奴隷にするつもりはない。国を絶滅させるつもりもない。
しかし、われわれの捕虜を虐待した者を含め、すべての戦争犯罪人に対しては厳しい処罰を行う。日本政府は、日本の人々に民主主義の考えを強化、復活させなければならない。言論、宗教、思想の自由および基本的人権の尊重が確立されなければならない。

11 日本は、産業を維持し、経済を持続して、戦争賠償の支払いに充てること。しかし、戦争を目的とする軍備拡張のための産業は許されない。最終的には、世界貿易取引関係への日本の参加は許される。

12  これまで述べた目的が達成され、日本人民の自由な意志によって、平和的で責任ある政府が樹立されるならば、連合国占領軍はただちに日本より撤退する。

13 われわれは日本政府に対し、日本軍の無条件降伏の宣言を要求する。かつ、誠意を持って実行されるよう、保障を求める。もし拒否すれば、日本はすぐさま徹底して撃滅される。

 

どうかな~。うちの生徒には難しいかな?

これをまた英文に訳しました。原文をそのまま簡単に訳し直してもいいんだけど、そもそもの英文が難しすぎて、Google先生も混乱してあらせられたので・・・^^

で、これ。

1 After discussions on behalf  of the President of the United States, the President of the Republic of China, and the Prime Minister of the United Kingdom, and the people of their countries, it was decided to give Japan the opportunity to end the war.
2  The massive US, British and Chinese militaries are huge and ready to strike the final blow to Japan.

3  The force that is going to Japan is far greater than the force that destroyed Nazi Germany. If the combined Allied forces invade, the Japanese army would be destroyed and all of Japan's land would be burned down.

4  It's time for Japan to make a decision. Will Japan perish under the control of selfish militarists, or will Japan choose the reasonable path of peace.

5  Our conditions are as follows. We do not allow any deviation from this condition. There are no alternative conditions. No delay in reply is allowed.

6  The power of those who deceive the Japanese people, lead them down the wrong path, and attempt to conquer the world must be removed. Without eliminating irresponsible militarism, a new order of peace, security and justice would not be feasible.

7  We, the Allies, will occupy designated areas within Japan's territory until such a new order is established and until it is clearly proved that Japan has completely lost its power to wage war.

8  The provisions of the Cairo Declaration must be observed. Japan's sovereignty is limited to Honshu, Hokkaido, Kyushu, Shikoku, and the surrounding islands we determine.

9  The Japanese army will return after being completely disarmed. And they will be given the opportunity to lead a peaceful and productive life.

10  We do not intend to discriminate against or enslave the Japanese. We have no intention of extinct the country of Japan. However, we will impose severe punishment on all war criminals, including those who have abused our prisoners. The Government of Japan must strengthen and revive the idea of democracy for the Japanese people. Freedom of speech, religion, thought and respect for basic human rights must be established.

11  Japan should maintain its industry, sustain its economy, and use it to pay war reparations. However, no industry will be allowed for on arms race for the purpose of war.  Ultimately, Japan will be allowed to participate in global trade relations.

12   If the objectives mentioned above are achieved and a peaceful and responsible government is established by the free will of the Japanese people, the Allied Occupation Forces will immediately withdraw from Japan.

13  We demand the Government of Japan to declare the unconditional surrender of the Japanese military.  And demand that it be carried out in good faith.  If it refused, Japan will be immediately and thoroughly destroyed.

 

Google先生と、ALTの先生の力を多分にお借りしました。

ALTの先生は、原文を読んで、「ローズベルトがしゃべっているイメージがある」と言っていました(トルーマンだけど)。

「今のアメリカは、これを言ったほうがいい」とも。

原文の英語はものすごく力強いのだそうです。

定時制高校の日々 ~保護者面談

夏休み前の保護者面談。
本人、保護者、担任の3人での面談です。
3人と書きましたが、フィリピンの生徒は、両親が揃って来てくださるところも多くて、それどころか弟や妹もやってきたりします。

フィリピンの人たちはほんとに家族愛が強くて、ファミリーが助け合うのは当たり前で、生徒たちも昼間に工場でアルバイトをして得たお金を家に入れ、小さい弟や妹のめんどうもよくみます。
それを当たり前のことと思っているようです。
きょうだいも多くて、どの家庭も4人はいるかな。去年赤ちゃんを産みました、というお母さんもふたりいらっしゃいました。
家族が多いことが幸せの証なのですね。

日本人の生徒でも、6人きょうだいの2番目という子がいます。その生徒の場合は、親の再婚からきょうだいが増えたようです。その生徒は、面談に保護者が来ることなく、生徒本人と担任の私との二者面談でした。おそらく、保護者に面談があることを告げていないと思います。迷ったけれど、その件で保護者に連絡することはしませんでした。
1学期は出席日数より欠席日数のほうが多かった生徒で、2学期もこのペースで欠席し続ければ、早い段階で単位を落とすことが決まります。数字を見せて説明しました。
本人は「めんどくさ」が口癖で、面談中だけでも9回口にしました。
「あーもーわかっとるから」「関係ないやん」「さっさと終わらせて」「はよ帰りたい」「前にも聞いたし」「めんどくさ」等々で私の話を聞いてない(聞かない、聞きたくない)アピールをしていました。でも、早く帰りたいと言っていたはずが、結局なんのかんのと40分くらい喋っていきました。
きょうだいが多くて家事負担も大きいことは、その生徒も外国籍生徒も同じです。いやむしろ、アルバイトをしている(そして家にお金を入れている)外国籍生徒のほうが負担は大きいでしょう。
家族に愛されている、そして家族を愛しているという実感があるかないかが、両者の違いなのだと思います。