読書・書評

「不機嫌な英語たち」吉原真里

半自伝的「私小説」とあるから、すべて事実というわけではないのだろうけれど、おそらく著者が本当に体験したことをほぼ忠実に書いてあるのではないかと思う。 とてもおもしろかった。 すべてのお話に、なんだか心がしんとなったり、じんとなったりした。ち…

「六条御息所 源氏がたり」林真理子

図書館で借りました。全三巻です。 大好きな林真理子さんの小説なので、ずっと気になっていたのだけれど、六条の御息所はあまり好きではなく…。 でも今回読み始めてみたら、さすがの林真理子さん!すらすら読めます。 源氏物語は高校生の時の古文で習ったの…

「地図と拳」小川哲

日露戦争、日中戦争、満州事変…この辺りの歴史に興味があります。なのでこの小説も絶対おもしろいはず!と思って読み始めました。 実際おもしろかったです。 ただ、どんどん興が乗っていったところで急に視点が変わってしまって、新しいお話が始まってしまう…

原田ひ香「おっぱいマンション改修争議」

変なタイトルだなぁと思ったけれど、この作者さんならおもしろいかも、と思って図書館で借りてきました。 実際とても読みやすくて、お話も良かったのだけれど、登場人物がみんなあまり幸せそうではなくて、読み終わってちょっとモヤモヤしてしまいました。 …

林真理子「李王家の縁談」

おそらくたくさんの資料にあたられて、よく勉強されて、その上で林さんの想像力と筆力でもって書かれた小説なのだから、それはおもしろくて当然! 李方子さんの写真は日本史の教科書で見たことがあったけれど、その写真がほんとうにお雛様みたいで、きっと当…

「同士少女よ敵を撃て」逢坂冬馬

悲しい小説でした。 ドイツ語を学び、村を出て進学することも決まっていた主人公セラフィマ。 夢と希望と責任感に溢れていた彼女の目の前で、村中の人が惨殺されて。 狙撃兵になるべく教育されているときも、狙撃兵になってからも、たくさんの人が殺されて、…

『小説8050』林真理子

まさしく一気読み。本当に一気に読んでしまいました。 おもしろい。 さすがの林真理子さん。 私立中学をやめて7年間引きこもりの青年。歯科医の父親。専業主婦の母親も、早稲田を出た姉も、その一家の描写が巧みで、引き込まれます。そんなにうまくいくわけ…

今村翔吾「塞王の楯」

近くの城址公園に立派な石垣があります。 城というと天守閣というイメージだったけれど、この本を読んで石垣を見る目が変わりました。読み始めるまでは本の分厚さにひるんだけれど、とても読みやすくてとてもおもしろかった。京極高次がいい。 実際の彼がど…

『一橋桐子(76)の犯罪日記』原田ひ香

いや~ 思いがけなくおもしろかったです。 もっと暗くて深刻な話を想像していたのに、なんて楽しいこと! ちょっとできすぎだなぁとは思いますが、桐子さんがとてもいい人なので、周りにもいい人が集まってくるのだなぁと納得できます。桐子さんはハッピーエ…

『 また、桜の国で』須賀しのぶ

今年読んだ本の中で、いちばん胸にずしんときました。 後半はずっと泣いてました。 第二次世界大戦期のポーランドが舞台です。主人公は、日本人外務書記生の棚倉慎(たなくらまこと)。ポーランド孤児の話が出てきます。孤児の話は、以前敦賀に行って知ってい…

小山義治「穂高を愛して二十年」

山に登って写真を撮ることをライフワークにしているかたに、ナイロンザイル事件というものを教えてもらいました。 その事件のきっかけとなる死亡した大学生が三重大学の学生であったことや、その実兄がナイロンザイルの問題点を突き止めたことなどを話してく…

『無理』奥田英朗

とても読みやすい群像劇です。 あぁこういうの、あるだろうなぁと一気に読めてしまいます。さすが奥田さんと思うのですが、 救いのない話ばかりで、ほんとに「無理」!って感じです。 どこかの町に、実際にいそうな人たちのお話ばかりなのに、まさか死人まで…

『ベルリンは晴れているか』深緑野分

おもしろかった。期待どおり。タイトルがいい。 戦争ものというと、ほとんど日本が舞台のものを読んでいたので、ドイツというだけで新鮮だった。 そうよね。 第2次世界大戦って、日本とアメリカの戦争ではなくて、まずはヨーロッパだよね。でもこれ、ミステ…

『小僧の神様・一房の葡萄』

少年少女日本文学館5●志賀直哉 小僧の神様 網走まで 母の死と新しい母 正義派 清兵衛と瓢箪 城の崎にて 雪の遠足 焚火 赤西蠣太●武者小路実篤 小学生と狐 ある彫刻家●有島武郎 一房の葡萄 小さき者へいいものを読んだ。 図書館の子ども向けコーナーで見つけ…

『あめつちのうた』朝倉宏景

運動神経ゼロの主人公 雨宮大地が、高校卒業後に入社した「阪神園芸」で甲子園球場の整備の仕事に就いて、成長していくお話です。運動神経の良し悪しで、小中高校時代の充実度は決まるといってもいいのではないかと私も思っているので、 主人公がものすごい…

『少年と犬』馳星周

直木賞をとった小説、ということで読みました。短編集です。 えぇ~なんというか…何度も泣いてしまったのですが、泣けたのですが…でも、つまらなかったです…。なぜなんでしょう。こんなに泣けたのにつまらなかったなんて、初めてでは?多聞という犬が主人公…

『いつか陽のあたる場所で』乃南アサ

小説新潮の今月号で、乃南アサさんの新シリーズを読んだ。 乃南さんの小説を読むのは初めてだったけれど、おもしろかったので彼女の単行本を図書館で探して、読んだのがこれ。短編集になっているのでとても読みやすい。 最近Eテレの「ねほりんぱほりん」とい…

『すき・やき』楊逸

中国出身の楊逸さん。 日本語を母語としない人が初めて芥川賞を獲ったと話題になったのは、もう何年前だか。図書館でたまたま見掛けて、初めて彼女の作品を読んでみました。この文章を、本当に日本語を母語としない人が書いたのか。 どうやったら、ここまで…

『マークスの山』高村薫

今さらで恥ずかしい。 高村薫さんの『マークスの山』を読みました。 全面改訂されて文庫になっているようですが、読んだのはハードカバーのほうです。はじめに出てくる、登山客を殴り殺してしまった岩田幸平を調べる佐野警部補と戸部刑事。そこのシーンは、…

『オリンピックの身代金』奥田英朗

前に読んだ『罪の轍』がとても良かったので、これも読んでみました。とてもとても良かった。昭和30年代の日本の様子が本当によくわかります。 オリンピック景気に沸き、右肩上がりの経済発展を続ける日本。でも日本に住む全員が豊かになったわけではないので…

『かがみの孤城』辻村深月

定時制高校に通う16歳の男の子から、とても感動したと聞いて、読んでみることにしました。 そのきっかけがなければ、絶対に読まなかったと思います。表紙がまったく好みではなかったからです。たぶんにファンタジーも混じっていて、突っ込みどころもたくさん…

『熱源』川越宗一

壮大なお話でした。 帯のコピーには「樺太アイヌの闘いと冒険を描く前代未聞の傑作巨編!」とあります。そうなのです。 確かにそうだと思うし、感動しました。 でもいまひとつ深まらなかったというか…。とにかく登場人物が多すぎるのかも。それも主役級の。…

『カラフル』森絵都

高校生の女の子に、「とても良かった」と教えてもらって、そのすぐあとに地元の図書館で目にして、そのまま借りました。ファンタジーです。 あっという間に読み終わりました。 ハッピーエンドで良かった。 真くんが死ななくて良かった。抽選に当たったという…

『罪の轍』奥田英朗

読み終えて、ぐったりしてしまった。 ラストに向けて怒濤のごとく突っ走っていくような展開に、一気に読み終えた。 (とはいえ前半はなかなか気分が乗らなかったけど)舞台は東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年。私の生まれる前だから、もちろん想像でし…

『昨日がなければ明日もない』宮部みゆき

宮部みゆきさんの作品は大好きです。 その昔、初めて読んだのが『火車』で、それこそ夢中で読みました。『楽園』も『模倣犯』もそうです。 この杉村三郎シリーズも好きな作品ですが、今挙げた3作品と比べると、当然ですが見劣りします。 でも宮部さんの人物…

『ミッション建国』楡周平

本作品はフィクションであり、実在する人物・団体・事件などにはいっさい関係がありません。とあるけれど、主人公の甲斐孝輔は小泉進次郎だし、多賀谷重次郎は中曽根康弘だし、他のこの人もあの人だわね。日本の行く末を思い、心底不安になるお話です。なん…

『U ウー』皆川博子

図書館で借りたままずいぶん放置してました。 ちょっと読みはじめては中断…。 でもやっと読み終えました。つまり私には、夢中になってページをめくる、という小説ではなかったのですが、 読んで良かったと思える作品でした。とても悲しいお話です。1613年の…

『FACTFULNESS』ハンス・ロスリング

「去年読んだ本の中でいちばんおもしろかった本です」 と、知人がくれました。最初に13問のクイズ。 これがおもしろかった。これだけでもういいかも、と思えるほど。 思い込みというのがいかに強いものか。 知識のアップデートをいかに怠っているか。 刷り込…

『ハンナのかばん』カレン・レビン(石岡史子訳)

読書感想文コンクールの課題図書だったことは知らなかった。アウシュヴィッツのガス室で、到着したその日に殺された13歳のハンナ。 ホロコーストを日本で紹介する石岡史子さんが、展示品として借り受けたのがハンナのかばん。ハンナがどんな女の子だったのか…

『ファーストラヴ』島本理生

週末にさらさら~と読める本を借りよ♪ と思って図書館で借りてきました。読み初めてすぐに、あれ?これ読んだことある と気付いたけれど、話を思い出せず。 読んだぞ読んだぞ~と思いながら、結局最後まで読みました。これ、直木賞をとった作品だったのかぁ…