読書・書評

小山義治「穂高を愛して二十年」

山に登って写真を撮ることをライフワークにしているかたに、ナイロンザイル事件というものを教えてもらいました。 その事件のきっかけとなる死亡した大学生が三重大学の学生であったことや、その実兄がナイロンザイルの問題点を突き止めたことなどを話してく…

『無理』奥田英朗

とても読みやすい群像劇です。 あぁこういうの、あるだろうなぁと一気に読めてしまいます。さすが奥田さんと思うのですが、 救いのない話ばかりで、ほんとに「無理」!って感じです。 どこかの町に、実際にいそうな人たちのお話ばかりなのに、まさか死人まで…

『ベルリンは晴れているか』深緑野分

おもしろかった。期待どおり。タイトルがいい。 戦争ものというと、ほとんど日本が舞台のものを読んでいたので、ドイツというだけで新鮮だった。 そうよね。 第2次世界大戦って、日本とアメリカの戦争ではなくて、まずはヨーロッパだよね。でもこれ、ミステ…

『小僧の神様・一房の葡萄』

少年少女日本文学館5●志賀直哉 小僧の神様 網走まで 母の死と新しい母 正義派 清兵衛と瓢箪 城の崎にて 雪の遠足 焚火 赤西蠣太●武者小路実篤 小学生と狐 ある彫刻家●有島武郎 一房の葡萄 小さき者へいいものを読んだ。 図書館の子ども向けコーナーで見つけ…

『あめつちのうた』朝倉宏景

運動神経ゼロの主人公 雨宮大地が、高校卒業後に入社した「阪神園芸」で甲子園球場の整備の仕事に就いて、成長していくお話です。運動神経の良し悪しで、小中高校時代の充実度は決まるといってもいいのではないかと私も思っているので、 主人公がものすごい…

『少年と犬』馳星周

直木賞をとった小説、ということで読みました。短編集です。 えぇ~なんというか…何度も泣いてしまったのですが、泣けたのですが…でも、つまらなかったです…。なぜなんでしょう。こんなに泣けたのにつまらなかったなんて、初めてでは?多聞という犬が主人公…

『いつか陽のあたる場所で』乃南アサ

小説新潮の今月号で、乃南アサさんの新シリーズを読んだ。 乃南さんの小説を読むのは初めてだったけれど、おもしろかったので彼女の単行本を図書館で探して、読んだのがこれ。短編集になっているのでとても読みやすい。 最近Eテレの「ねほりんぱほりん」とい…

『すき・やき』楊逸

中国出身の楊逸さん。 日本語を母語としない人が初めて芥川賞を獲ったと話題になったのは、もう何年前だか。図書館でたまたま見掛けて、初めて彼女の作品を読んでみました。この文章を、本当に日本語を母語としない人が書いたのか。 どうやったら、ここまで…

『マークスの山』高村薫

今さらで恥ずかしい。 高村薫さんの『マークスの山』を読みました。 全面改訂されて文庫になっているようですが、読んだのはハードカバーのほうです。はじめに出てくる、登山客を殴り殺してしまった岩田幸平を調べる佐野警部補と戸部刑事。そこのシーンは、…

『オリンピックの身代金』奥田英朗

前に読んだ『罪の轍』がとても良かったので、これも読んでみました。とてもとても良かった。昭和30年代の日本の様子が本当によくわかります。 オリンピック景気に沸き、右肩上がりの経済発展を続ける日本。でも日本に住む全員が豊かになったわけではないので…

『かがみの孤城』辻村深月

定時制高校に通う16歳の男の子から、とても感動したと聞いて、読んでみることにしました。 そのきっかけがなければ、絶対に読まなかったと思います。表紙がまったく好みではなかったからです。たぶんにファンタジーも混じっていて、突っ込みどころもたくさん…

『熱源』川越宗一

壮大なお話でした。 帯のコピーには「樺太アイヌの闘いと冒険を描く前代未聞の傑作巨編!」とあります。そうなのです。 確かにそうだと思うし、感動しました。 でもいまひとつ深まらなかったというか…。とにかく登場人物が多すぎるのかも。それも主役級の。…

『カラフル』森絵都

高校生の女の子に、「とても良かった」と教えてもらって、そのすぐあとに地元の図書館で目にして、そのまま借りました。ファンタジーです。 あっという間に読み終わりました。 ハッピーエンドで良かった。 真くんが死ななくて良かった。抽選に当たったという…

『罪の轍』奥田英朗

読み終えて、ぐったりしてしまった。 ラストに向けて怒濤のごとく突っ走っていくような展開に、一気に読み終えた。 (とはいえ前半はなかなか気分が乗らなかったけど)舞台は東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年。私の生まれる前だから、もちろん想像でし…

『昨日がなければ明日もない』宮部みゆき

宮部みゆきさんの作品は大好きです。 その昔、初めて読んだのが『火車』で、それこそ夢中で読みました。『楽園』も『模倣犯』もそうです。 この杉村三郎シリーズも好きな作品ですが、今挙げた3作品と比べると、当然ですが見劣りします。 でも宮部さんの人物…

『ミッション建国』楡周平

本作品はフィクションであり、実在する人物・団体・事件などにはいっさい関係がありません。とあるけれど、主人公の甲斐孝輔は小泉進次郎だし、多賀谷重次郎は中曽根康弘だし、他のこの人もあの人だわね。日本の行く末を思い、心底不安になるお話です。なん…

『U ウー』皆川博子

図書館で借りたままずいぶん放置してました。 ちょっと読みはじめては中断…。 でもやっと読み終えました。つまり私には、夢中になってページをめくる、という小説ではなかったのですが、 読んで良かったと思える作品でした。とても悲しいお話です。1613年の…

『FACTFULNESS』ハンス・ロスリング

「去年読んだ本の中でいちばんおもしろかった本です」 と、知人がくれました。最初に13問のクイズ。 これがおもしろかった。これだけでもういいかも、と思えるほど。 思い込みというのがいかに強いものか。 知識のアップデートをいかに怠っているか。 刷り込…

『ハンナのかばん』カレン・レビン(石岡史子訳)

読書感想文コンクールの課題図書だったことは知らなかった。アウシュヴィッツのガス室で、到着したその日に殺された13歳のハンナ。 ホロコーストを日本で紹介する石岡史子さんが、展示品として借り受けたのがハンナのかばん。ハンナがどんな女の子だったのか…

『ファーストラヴ』島本理生

週末にさらさら~と読める本を借りよ♪ と思って図書館で借りてきました。読み初めてすぐに、あれ?これ読んだことある と気付いたけれど、話を思い出せず。 読んだぞ読んだぞ~と思いながら、結局最後まで読みました。これ、直木賞をとった作品だったのかぁ…

『アウシュヴィッツの歯科医』ベンジャミン・ジェイコブス

読み終えるのに時間がかかりました。 特に前半。 なんか、同じような描写が続いて、遅々として話が進まないというか…。 半分を過ぎたくらいから、ようやくさくさく読めるようになりました。これが現実のこととは、本当に信じられないです。 この著者が生還で…

『ゆうじょこう』村田喜代子

貧しいというのは辛いことで、学問がないからそこから抜け出す術も知らない。 借金のかたに遊女として売られた娘の話。 と書くと、なんだかすごく悲しい話だと思うのだけれど、この主人公は無邪気で健気でなんだか明るい。鐵子さんがいい。 売られてきた娘た…

『天涯の花』宮尾登美子

珠子がいじらしい。 ずっと自分を抑えて生きてきた子だから、彼女自身が心の底から幸せだと思える人生を選んでほしいとと思い、でもどうすることが珠子の幸せなのだろうかと、私も考えながら読みました。典夫はかわいそうだけれど、もし正式に結婚を承諾した…

中日新聞の「この道」

中日新聞(東京新聞)の夕刊に連載している、「この道」というエッセイ。今は西村京太郎さんが書いているのだけれど、これがとてもおもしろい。 十津川警部シリーズの推理小説しか読んだことがなかったけど、こんなにいろんなことをしていた人なんだなぁ。 今…

『沈黙の町で』奥田英朗

読み終わってからもなかなか感想が書けなかった。 中学生の学校での転落死から始まる話。とにかく中学生の集団心理がリアル。 私が中学生だったのはうんと前だけれど、今も同じなのだろう。死んでしまった名倉君は、あぁこれはいじめられるわ…、という典型的…

『帰郷』浅田次郎

夏休みに、戦争ものをたくさん読もうと思って借りた一冊。もう夏は終わってしまったけれど。短編集です。 表紙カバーの白黒写真がなんとも言えない。 表紙をめくって、そこに頭を下げる娘と少女を見たとき、知らないはずのその光景が、私の前にさあっと現れ…

『レディ・ジョーカー』髙村薫

上下巻、読みきるのに1か月以上掛かってしまった。 ちょっと読んでは休み、ちょっと読んでは休み、 なのに、終盤はものすごいペースで読みきった。今さらながら、「これ読んでなかったなぁ~」と思って読み始めたのだけれど、こんな小説とは。髙村薫って、…

『マスカレード・ナイト』東野圭吾

さくさくさく~と、あっという間に読めてしまったけど、これはつまらなかったなぁ。仲根緑が男性というのが、登場したところからバレバレだったし、あっと驚く感が全くない。 そのくせ種明かしが、そんなん知らんがな!という感じの、推理のしようがない内容…

『校長、お電話です!』佐川光晴

学校のことをよく調べて書いているお話だなぁと思いました。 そういう意味で、現実離れしているわけではないはずなのですが、なんと言うか…正義は最初から最後まで正義で、悪者はずっと悪者、という感じがどうもしっくり来ないというか…。 主人公の校長先生…

『水曜日の凱歌』乃南アサ

RAAという組織のことを、私は知らなかった。高校時代、大学受験に日本史を選択した。 戦後史はほぼ独学で、図書館で教科書を読んでいたのだけれど、 戦前戦中は、治安維持法とか大政翼賛会とか隣組とか、とにかく人権なんかとことん無視で、 国のために命を…