定時制高校の日々 ~給付奨学金

やった~!!
給付型奨学金の支給が決まりました!

教育弘済会が高校2年生を対象に募集している奨学金です。
10万円がもらえてしまうのです。

各高校で2名まで申請ができて、県で40名がもらえます。
成績よりも生活困窮度が高い生徒に優先されるとは聞いていましたが、学校から推薦する以上、いい加減な選考はできません。
私は2年生の担任なので、プリントをつくってクラスの生徒にこの奨学金について周知しました。
弘済会からの募集案内がありますが、それでは特に外国籍の生徒には意味がわからないので、簡単な日本語に直します。


奨学金(Scholarship)のお知らせ

10万円が もらえます。

申し込みできるのは、つぎの 3つに あてはまる人 です。
●いっしょうけんめい 勉強する人
●家の お金が 少なくて、こまっている人
●学校を あまり 休まない人

申し込みたい人は、担任に 言ってください。
しめきり○月○日

漢字にはすべてふりがなをつけます。
そして、申し込んできたのが2人。
でも応募できるのは学校で2人までなので、全日制から何人申し出があるかによります。
全日から応募する生徒がいませんように~と、校内締切日まで祈ってました。
幸い?全日からの応募はなく、この2名に決定!
保護者の所得証明書を取り(この過程で応募者の1人と市役所に行ったのでした)、
本人たちが家族状況と申請理由を書き、担任の私が推薦書を書き、
そして給付決定通知が届いたのでした。しかも2人とも!やった~!!

届いた金曜は期末試験の追試と補講日で、当人たちは登校していないので、週明けに知らせます。
月曜日が楽しみです。
喜ぶだろうなぁ ^-^

定時制高校の日々 ~就職活動開始、のはず

7月1日は、企業の求人票が公開される日で、求人票を持って学校を訪問される企業さんもあります。
正面玄関にはずらりとスリッパが並んでいて、順番待ちの企業さんもいました。進路指導部は大忙し。
全日制はね。

定時制に推薦枠を用意している企業さんはまずありません。
生徒のほうも、工業科の全日制の生徒のように、就職に向けた動きに入るわけではないので、いつもと変わらない日々です。

それでも木曜日(1日)に一社、金曜日に二社が定時制に求人票を持ってきてくださいました。
全日制に来たついでに、という感じではありますが、ありがたいことです。

食品のトラック輸送会社
建設会社
引越し業者さんです。

どの会社も人手不足で、なかなか応募者を確保できないそうです。

引越し業者さんにはうちの定時制の卒業生が勤めていて、今はリーダー的立場で頑張っているのだとか。

その卒業生は、古くからみえる先生によると、結構やんちゃタイプだったとか。
今の定時制の生徒は、ほんとにおとなしい生徒が多いのです。

今年度のうちの卒業予定者で、現時点の就職希望者は2人。外国籍と日本籍がひとりずつ。
ふたりとも、相変わらずマイペースでやっています。緊張してるのは私だけだなぁ~

定時制高校の日々 ~コロナ感染者濃厚接触者

県内の高校で、生徒の家族にコロナ感染者が出たとか。
で、同居家族である生徒も濃厚接触者に認定されてPCR検査を受けるのだとか。
ふ~ん、という話なのだけれど、その生徒の友達数名も濃厚接触者で検査対象になったらしく、そしてその友達数名のひとりが、うちのクラスの生徒のきょうだいなのらしい。
え?それってうちの生徒になんか関係あるの??って思ったんだけど、
「同居家族がPCR検査の対象になった」ということで、自宅待機をしてもらわなければならないのだとか。

ええ~?そうなの?
来週から期末テストが始まるというのに…仕方あるまい。

しかしその生徒と連絡がとれない。
外国籍生徒なのだけれど、本人は電話を持っていなくて、連絡先として把握できているのは母親の携帯番号のみ。その番号にかけてみても「電波の届かないところにあるか~」のアナウンス。仕事中かな。
管理職から校内に入れないように言われて、昇降口前で待つことに。
きょうだいがPCR検査を受けるのは来週火曜日らしいので、少なくともそれまでは登校見合わせをお願いするしかないのね。

やってきたその生徒は、学校がそれを知っていることに少し驚いたようだけれど、おとなしく引き返していった。もともとおとなしい生徒なのだけれど、なんとなくその後ろ姿が寂しそうに見えてしまって、悲しくなってしまった。

これが先週。
そして今日火曜日。
陰性だったそうで登校してきました!
良かったね~。
ご家族みんな不安だったんだろうなと思う。特に外国のかたたちの方が、日本人の私たちよりコロナ差別に敏感なように思う。
自宅待機中、こちらから連絡しようにもお母さんの携帯はやっぱり繋がらないし、本人宛にGoogle classroomのメール機能を使ってメッセージを送っても返事ないし。
タブレットはあるから、classroomのメールは読めるって言ってたのになぁ~と思っていたところに登校してくれて、私も安心したよ。
元気に登校してくれて良かった。
今日のテストはできたかな?

定時制高校の日々 ~笹生優花選手

全米女子オープンゴルフで優勝した笹生優花選手。日本とフィリピンのハーフの選手なのですね。

なにしろこの若さで優勝ですから!
これはみんなに紹介しないと!と、外国籍の取り出しクラスで早速取り上げました。
うちの学校の外国籍生徒は、ひとりを除いて全員フィリピンの出身なのです。

彼女の優勝を報じるニュースを探して、
書き起こし。
ところどころ穴あきにして、各自にプリント配布。
その上でニュース映像を見せました。
とはいっても速報ニュースだったので、笹生選手の顔が映っているだけの静止画でしたが。

短いニュースで、時間にして15秒くらい。
一度ではもちろん聞き取れないので、何度も繰り返し聞かせます。

(女子ゴルフ)の海外メジャー全米女子オープンで、笹生優花(選手)が(優勝)しました。
海外メジャーでの(優勝)は、(日本女子選手)としては3人目の(快挙)です。

Yuka Sasou won the US Women's Open, an overseas major of woman's golf.
The victory in the overseas major is the third feat as a Japanese female player.

( )のところを空欄にして聞き取りをさせてみました。

英訳もつけてみました。合ってるのかな?

外国籍の生徒に聞き取りをさせると、
せんしゅ を せんしゅう としたり、
かいきょ を かいきょう としたり、
つい音を伸ばして書いてしまうことがよくある。そういうふうに聞こえるのかなぁ。
なかなか難しいです。

笹生選手はフィリピンを拠点にしているし、今大会もフィリピン代表として出場しているらしいし、生徒も親近感を持つのでは?と思ったのだけれど、そうでもなかったみたいです…。
どうもゴルフというスポーツ自体に興味がないみたいで、「なにそれ?」という感じでした。

フィリピンの生徒に圧倒的に人気のスポーツはバスケットボールですね。観るのもするのも大好きみたいで、体育の時間は、バスケットをすごくしたがるみたいです。

定時制高校の日々 ~自動車運転免許

18歳になると、すぐに運転免許を取りに行く生徒も少なくない。
先日も、4月生まれの生徒が無事に免許を取得した。
これは全日制の生徒でも同じだけれど、教習所に通いだして、「こんなに勉強したのは生まれて初めて」という生徒を何度も見てきたなぁ。

今の4年生にも教習所通いをしている生徒がいる。日本籍の男子生徒だ。
3年の終わり頃に通い始めた。
4年生ということは就職活動をする年であるわけで、どんな仕事は嫌か、どんな仕事ならできそうか、そろそろ具体的に考えてほしいところ。
その彼が、最近、もう免許は取らないと言い出したらしい。

担任の先生によると、今は教習所も行かなくなってしまっているそう。
教習所が嫌というより、車の運転自体をしたくないんだとか。だから仕事も、電車とバスで通えるところにすると言っているらしいのだ。

まいった。

ただ、私も教習所が嫌だったし、運転も怖くて、20年もペーパードライバーをしていたので気持ちはわかる。
嫌なものは嫌なんだよね。
世の中の車を運転している人は、こんなにもすごいことをしていたんだなぁと思ったものです。

しかしご両親からは、免許は必要だから教習所に行けと言われるらしく(その気持ちもわかる)、
それがまた嫌なのらしい。俺の金で行っとるんやで辞めるのも俺の自由、だとか。

教習所で嫌なことがあったのか、運転が怖いのか、本当の理由はわからないけれど、
どうも今は頑ならしいので放っておくしかなさそう。

ただ、製造業を勧めようと思っていた私にすると、車に乗れないというのはかなりのマイナス。
地方ではやっぱり車がないと不便だし、電車やバスで便利に通えるところに工場はない。
彼が心をひらいて、今抱えている不安を話してくれたらいいのだけれど。

どこかに所属していることは、彼や彼のご両親には安心だと思うので、彼に合う就職先を見つけられるように、私が頑張らなきゃなぁと思うのでした。

定時制高校の日々~日本史授業。またもNHK動画を使う

月曜は1限目が日本史の受業。

1限目は遅れてくる生徒もいて、今日は10分遅れと30分遅れがひとりずつ。

欠席は3人。

ちなみに全員出席しても15人です。

 

さて、今日はこの動画を使うことにしました。

 

www2.nhk.or.jp

 

授業前にプリントを用意します。

ナレーションをすべて書き出して、それに英訳をつけます。

私の乏しい英語力ではなかなか難しいので、Google翻訳さまの力を多分にお借りしました。

 

授業の冒頭で、

前回のいろ塗りプリントで列強の世界進出を理解させた(つもり)なので、もう一度教科書の地図を見ながらその説明をして、

今日は日本が初めて経験する近代戦争について勉強するよ~

と話してからこのプリントを配りました。

 

プリントを配ると、日本籍の生徒は教科書を見て問題を解こうとします。

昨年の日本籍生徒だけでの世界史の授業では、最初に配ったプリントの問題を各自教科書を見て解かせていたので。

でもごめん。今回は教科書を見てもわからないかも。


動画をスタートさせて、導入のナレーション部分を聞かせてみます。

でも…聞いてない感じ~💦

月曜日の1時間目だもんね~

まだぼーっとしてるよね~(と自分をなぐさめてみる)


「音を聴いてみてね~。はじめのカッコのところ、なんて言ってるかな~」

もう一度はじめから流します。

日本人生徒のひとりが「聞こえたけど漢字がわからん」と言います。

「日本人は漢字で書いてよ~」

と言って、ふたつめのカッコのところも繰り返しました。

ひとつめのカッコに入るのは「朝鮮半島

ふたつめは「不平等条約の改正」です。

外国籍生徒の聞き取りのトレーニングを兼ねているつもりでしたが、まさかの日本人生徒も聞き取れないという…

不平等条約」は聞こえたようだけど、「かいせい」が無理。

「たいせい」って聞こえたみたいね。

NHKアナウンサーのナレーションでも難しいかぁ。


「こう言ってるんだよ~」

と言って、

ふびょうどうじょうやくのかいせい

と板書。

日本人生徒を指名して、前に出て漢字に直してもらいました。「改正」は間違えちゃったけど。


そんな感じで、10分の動画の1分45秒のところで本日は終わり。

本日板書したのは、

朝鮮半島

不平等条約の改正

1894年

甲午農民戦争

日清戦争

下関条約

伊藤博文

陸奥宗光


それぞれについて説明します。

画像を使って、できるだけ簡単な日本語で解説したけれど、どこまで通じているのかは自信がない。日本籍生徒の反応もほとんどないしな~。


1894年という年号を覚えさせる必要はあるのか、については考えるところだけど、

この1894年は覚えさせたいと思う。

この年号を知っていれば、ちょうどその10年後に日露戦争、そのまたちょうど10年後に第一次世界大戦と、大きな戦争が起きた年がわかるから。

私の十八番、

「いっぱい食うよ 日清焼そば!」

年号暗記を披露したけど、こういう覚えかたって外国籍生徒には通じないよね💦


定時制高校の日々 ~日本史授業リベンジ

昨日金曜日は3年生の日本史の授業の日。

私のいちばん悩ましい授業。

 

3年生は日本籍生徒が8人。外国籍生徒は7人。

そのうち今日は日本籍生徒がふたり欠席です。

 

今やっているのは、明治維新の文明開化。

前回、福沢諭吉と津田梅子と渋沢栄一を紹介したけれど、

いまいち反応が良くなくて(というか、反応がなくて)

今日はリベンジ。

 

福沢諭吉を紹介するのに、NHKの力を借りることにした。

www2.nhk.or.jp

 

事前にこの番組の内容をまとめたプリントを用意。

ここに出てくる「♪文明・カイ・歌」という歌の歌詞を全部書き出して、

その英訳も準備して配布。

それから視聴。

 

字幕もつけて視聴したけれど、おそらく外国籍生徒にはナレーションは聞き取れていないと思う。でも映像は目を引くのか、とりあえず日本籍・外国籍を問わず、画面を見ている生徒が多い。

最後にドキリポイントふたつ、

福沢諭吉は「西洋事情」で西洋の文化や考え方を広めた

②諭吉は「学問のすすめ」で学問の大切さを説いた

をプリントに書き写させる。

外国籍生徒には意味は通じていないかもしれないが、指示どおり書き写している。読めなくても意味がわからなくても、漢字を書き写すということが勉強なのだと思っているのかもしれない。

事前に配布したプリントを、時間を取ってしっかり読んでから視聴すれば良かったなあというのは、あとから思ったこと。

 

そのあと白地図(世界地図)を印刷したプリントを配って、イギリスを探させる。

外国籍生徒も日本籍生徒も、イギリスがどこかわからないので、机間巡視をしてひとりひとりにイギリスはここだよ~と言って回り、色をつけさせる。

それから、教科書に出ている19世紀末から20世紀初頭の地図を見て、イギリスの支配が及んでいた地域を色塗りするように指示。

この色塗りは実際にやってみるとわかるのだけれど、かな~り広い範囲を塗らなければならない。結構めんどい。でも誰も文句を言わずにせっせと色を塗っている。色ペンを持っていない生徒には私の蛍光ペンを貸した。

 

定時制に来て全日制の生徒とは違うなあと思ったことのひとつに、ペンケースを持っていない生徒が多い、ということがある。

全日制の生徒は、もはやバッグ?と思うような大きなペンケースに、じゃらじゃらとカラフルなペンを入れている生徒が多かったのだけれど、定時制では鉛筆一本だけ持って登校してくる生徒が少なくない。テストでも消しゴムを持ってこないので、書き直す際には鉛筆でぐちゃぐちゃと塗りつぶしている生徒もいる。今度消しゴムを持ってこなかったら正解を書き直してあってもバツにするからね!と言ってあるけれど、どうかな。

 

さて、そうして色をつけさせて、大変だったね~、インク減ったね~と話してから、

国土の小さな島国であるイギリスが、どうしてこれだけの広範囲を支配し得たのかと問いかけてみる。もちろん反応はなし。

外国籍生徒には私の問いかけの日本語は理解できていないかもしれない。

日本籍生徒には、「去年世界史の授業で勉強したこと覚えているかな~」と声をかけてみた。「ああ~、なんかやったなあ~」と返してくれる生徒がいて嬉しい。

 

まあ結局、それ以上なにも出てこなかったので、こちらから、イギリスが世界で最初に産業革命を成し遂げた国だったね~という話をする。さくっと説明をして(日本語は通じていないと思うけれど)、そのあと、イギリスの次に本国以外に広い支配地を持っている国はどこか、もう一度教科書を見せて探させてみる。

これには外国籍の男子生徒が「フランス」と答えてくれた。

 

イギリスやフランスといったヨーロッパの国々が、世界中に支配を広げていったこと、

日本も西洋に飲み込まれてしまうのではないか、そうならないためにはどうすればよいか、

福沢諭吉は、そのためには、ひとりひとりが学問をすることが大切だと言ったんだね、と確認して今日の授業を締めくくったのでした。

 

生徒に考えさせる授業はできなかったけれど、

NHK配信動画の視聴と、地図の色塗りという作業が大半を占めたせいで、

スマホを触る生徒や、居眠りをする生徒は少なかったと思う。

それだけでも、なんとなく「授業をした風」な感じにはなったけれど、う~む・・・

次の授業はどう攻めるか・・・、あ!次の日本史はさっそく月曜日だった。