映画『アラビアのロレンス 完全版』

午前十時の映画祭で鑑賞。
土曜日(2月1日)だったせいか、そこそこお客さんいます。
前にこの映画を観たのはもう20年以上前で、その時の感想すら覚えていない。ただものすごく長かったということだけ。

そして今回。

良かった。
特にアリが良かった。
砂漠の中を蜃気楼とともに登場するシーンは、本当にぞくぞくするほどだった。

登場したアリは、ロレンスのガイドを何の躊躇もなく射殺する。水を盗む者は殺されて当然なのだと。私には強烈だった。

ネフドを越えてアカバを獲るというロレンス。
そんなことは絶対に無理だ。
「神が創った最悪の場所」とアリの指差すその砂漠はどこまでも続いていて、見ているこちらまで目を細めたくなる。

そのネフドを渡り切ろうというとき、隊のひとりがいないことに気づくのだ。
昼前にはもう死ぬ。それがあいつの運命だとアリが
止めるなか、ロレンスはそのガシムを助けに戻るのです。
アリの悔しさを思うとやるせなくなる。どれほど辛かったことか。
だからロレンスがガシムを連れて戻ったときの、信じられないものを見る気持ちと、抑えようのない喜びとが合わさったアリの表情が素晴らしい。
そして水を差し出すアリにロレンスが言った「運命などない」という言葉。
これ、ほんとに言ったんですか~!かっこ良すぎるんですけど!

この映画は、このネフド越えのところが圧巻でした。あとは見ていて辛くなるシーンも多くて。

ただ砂漠は本当に美しい(見ているぶんには)。
音楽もいい。
こんな超超大作が、1962年公開なんて信じられない。どうやって作ったの??

映像の美しさや、アリのかっこ良さや、ロレンスの苦悩や、見所はたくさんあるのだけれど、
如何せん状況説明がほとんどないので話を理解するのが難しい。
私は若い頃、神坂智子の『T・E・ロレンス』という漫画を読んでいたし、中野好夫の『アラビアのロレンス』も読んだので、ある程度状況を理解して観られたけど、何も知識のないままに観ると、「敵」ってそもそも誰?っていうくらいの感じになるかも。
アカバの重要性とかも、地図で説明があったらわかりやすいだろうし。
まぁこの映画のいいところは、そういうのが全然ないところなのでしょうけど。

蛇足ですが、私はさきに挙げた『T・E・ロレンス』を読んでロレンスのことを知ったし、志望大学を決めました。
この超大作を観ることはもうないかもしれないけど、ずっと忘れない作品です。

本当に素晴らしいよ。

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