植村直己さん

植村直己さん没後35年という記事をAERAで読んだ。

彼が消息を絶ったときのことを覚えている。
当時私は中学生で、国語の教科書に彼の文章が載っていた。ちょうどそこを授業でやっていたときだったのだ。
「この人が今行方不明になってるのよ」と国語の教師が言っていた。
中学生はニュースなんか見ないし、新聞だってテレビ欄をちらほら見るくらいだから、私は何も知らなかった。

教科書に載っていた彼の文章の題名も覚えていないけれど、
要は山に登って、途中で死も覚悟して、そしてその文章を書いているのだから当たり前だけど、無事に帰ってくるという筋のお話だったと思う。

覚えているのは、彼が死を考えたところ。そこにあった
「~~ちゃん、俺は死ぬよ」
という彼の言葉。
この「~~ちゃん」というのは植村氏の奥さんの名前なのだが、この言葉は強く印象に残っていたのに、名前だけはすっぽり記憶から消えていた。

今回AERAを読んで彼の奥さんは公子さんというのだと知った。あぁそうだった。たぶんキミ子さんと発音するはずだ。

「きみちゃん、俺は死ぬよ」
帰ってくることの叶わなかったマッキンリーで、彼はやはりそう呟いたのだろうか。