少年少女日本文学館5
●志賀直哉
小僧の神様
網走まで
母の死と新しい母
正義派
清兵衛と瓢箪
城の崎にて
雪の遠足
焚火
赤西蠣太
●武者小路実篤
小学生と狐
ある彫刻家
いいものを読んだ。
図書館の子ども向けコーナーで見つけて借りてきたのだけれど、字は大きくて読みやすいし、短編ばかりなのも良かった。
どの作品も本当に良かった。
「小僧の神様」と「清兵衛と瓢箪」「一房の葡萄」は、子どもの頃に読んだことがあると思う。「城の崎にて」は高校の国語の教科書にあったような…。
志賀直哉の作品は、どれもが「え?これで終わり?」というものばかりで、日常の一部をぱちんと切り取ったものみたい。
「清兵衛と瓢箪」では、学校の先生や父親が、瓢箪が高額で売れたことを知って驚くところを見たいと思ったけど、そうでないのがこの小説のいいところなんだろうなぁ。物足りないけど。
「小僧の神様」はおもしろかった。
志賀直哉は小説の神様と言われているのね。
日常の、それこそ神様でなければ小説にしようなどと思わないお話を書いちゃうところが、神様と呼ばれるゆえんでしょうか。
有島武郎の「一房の葡萄」。
私も子どもの頃に主人公と同じような体験をしたことがある。
私の場合は絵の具ではなく消しゴムで、クラスの男の子が持っているプラスチックの消しゴムケースがうらやましくてうらやましくてたまらなかった。
そのケースにはお尻のところにプラスチックの刷毛みたいなものがついていて、それで消しゴムのカスを掃除するようになっている。
青い透明のケースに白い刷毛。ほしくてほしくてたまらなかったそのケースが、教室に落ちているのを見つけたとき、私はその子の机に戻すことをせずに自分のポケットに入れたのだ。
私と主人公の違うところは、その消しゴムがなくなったことを持ち主の男の子が何も気にとめなかったことだ。
彼だけではなく、誰も何も思わず、もちろん私に消しゴムを返せと言ってくる人もおらず、もとからその消しゴムなどなかったかのように過ぎていったのだ。
私はその消しゴムケースに自分の消しゴムを入れた。でも学校に持っていくことも、それを使うこともできないから、家に置いたままにしていたのだった。
私の最初で(おそらく)最後の泥棒です。ずっと忘れられません。