今さらで恥ずかしい。
高村薫さんの『マークスの山』を読みました。
全面改訂されて文庫になっているようですが、読んだのはハードカバーのほうです。
はじめに出てくる、登山客を殴り殺してしまった岩田幸平を調べる佐野警部補と戸部刑事。そこのシーンは、巻頭にある北岳周辺の地図を何度も確認しながら読みました。
そこだけですっかりお話に引き込まれたのですが、佐野さんと戸部さんは主人公ではなかったのですね。
マークスこと水沢裕之が何をネタに恐喝しているのか、それを知りたくて頑張って読んでいました。
種明かしは、彼がたまたま手に入れた長文の遺書で明らかになるのだけれど、それはちょっと呆気なかったです。
山で急死した人物を、疑われるからって埋める?
たまたまその場面を目撃してしまったであろう、岩田幸平にスコップで殴り殺されてしまった登山客なんて、気の毒すぎる。
もう、このお話は気の毒な人がいっぱいいすぎて…。
撃たれた真知子が、合田に水沢とのことを一生懸命に話すシーンでは涙が出ました。
ふたりで穏やかに暮らしたいだけだったのにね…。
水沢は真知子が死んだと思い込んでいるふうだったけれど、生きていることを教えてあげたかったよ。
たくさん人を殺してしまって、それはまったく許されるべきではないのだけれど、
とにかく悲しいことでした。
林原はあのあとどうなったのかしら。
最後、山で死んでしまったマークス。本当に本当に呆気なくて、なんだかしょんぼりしてしまったことでした。