読み終えて、ぐったりしてしまった。
ラストに向けて怒濤のごとく突っ走っていくような展開に、一気に読み終えた。
(とはいえ前半はなかなか気分が乗らなかったけど)
舞台は東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年。私の生まれる前だから、もちろん想像でしかないんだけど、読んでいてまるでタイムスリップしたかのように、その時代そのものを見せられている感じがした。かつて兵隊だった人たちが普通に働いていて、町には傷痍軍人たちが物乞いをしている。
ミキ子がいい。
弟の明夫もいい。母親もいい。
宇野寛治の生い立ちには同情する。
鈴木夫妻の苦しみを思うと、ラストの葬儀のシーンでは私も泣いてしまった。
とにかく、焼け跡から復興し、ものすごい勢いで変貌しようとしている東京の息づかいまでが聞こえてくるような作品だった。
安保闘争の時代を生きた人たちにもたまらない作品なのではなかろうか。
爽快感のある作品でも、ほんわかする作品でもないけれど、これは読んで良かった。
なによりやっぱり、ミキ子が良かった。